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変化する日本のトランスジェンダーライフ①温泉とワタシ達のいい関係

私がこれまで経験した、仕事の中でのLGBTQ+についてお伝えしたいと思います。
今回の内容は大きな事件でもなく、そんな事で悩まなくても…と思われる程度の小さな事かもしれません。
しかし現在はLGBTQ+に理解のある方と、理解が難しい方が共存している時代で、法律や規則や常識ではどうすることもできない場面をこれまで見てきました。それは違う!と声を高らかに上げることも出来るかもしれませんが、私自身は声を上げるよりも毎日穏やかに、笑って過ごすことが出来るようになれば嬉しいと考え、スムーズに進めることが出来るように日々のお仕事を行ってきました。

津田 まり

1981年1月2日に山口県で生まれる。生まれた時の戸籍は男性。2018年7月10日に性別適合手術をして、戸籍の性別を女性に変更。福岡工業短期大学電子情報システム学科卒業後、一般企業や飲食店などに勤務し現在は関西を中心に様々な学校や自治体、企業などでLGBT の基礎講座や自らの経験を講演するなど、LGBT 講師として活動。また、LGBTのコミュニティの参加や主催、LGBT 当事者の相談等も積極的に行う。1999年自分でホルモン療法を開始し2001年頃~性同一性障害の診断を受けるために、病院を巡り、2015年睾丸摘出の手術&性同一性障害の診断書を取得。戸籍の名前変更。2018年性別適合手術して、戸籍の性別変更。
★主な活動歴
・講演、研修等
和歌山大学、奈良県立医科大学、大阪医療専門学校、大阪医療専門学校、宝塚市ひらい人権学習、宝塚市長尾台小学校区人権促進委員会、宝塚市すみれ小学校、宝塚市末成小学校、宝塚エルライン、門真市大和田小学校、門真ふれ愛倶楽部、滋賀県農業共済組合、滋賀県野州市教育委員会保護者向け人権研修会、大阪キャッスルホテル。和歌山大学、奈良県立医科大学、大阪医療専門学校、大阪医療専門学校、和歌山大学、奈良県立医科大学、大阪医療専門学校、大阪医療専門学校、富田林市人権・市民協働課人権・男女共同参画係の研修会や資料作成等
・イベント主催
LGBT 映画「私はワタシ〜over the rainbow 〜」の上映会&トークショーを主催。(女優の東ちづるさん、映画監督の増田弦樹さんにトークショーに出演。)
LGBT つながりナイトを主催。(トランスジェンダーFtM、MtF、ゲイ、レズビアンの4 人のトークショーに出演。)
LGBT 映画「女になる」の上映会&トークショーを主催。(出演者3 名と監督と主演者のお父様の5 名によるトークショーを開催。)
LGBT インタビューメディアサイト「LGBTER」に2019 年2 月24 日<前編>、26 日<後編>が掲載。<参考URL> https://lgbter.jp/lgbter/mari-tsuda/?sexuality=ftm

脱衣所までの遠い道のり

「公衆浴場でのトランスジェンダーの入浴はNGまたはタブー」というイメージを多くの人がお持ちではないでしょうか。

男湯?女湯?どちらが正解?どちらも不正解?など思うところは色々あり、今までの世の中の考え方ではタブー視されてきたことは十分承知しております。

さて公衆浴場や温泉施設を利用する場合、まず脱衣場に向かう前に受付を済ませるのが一般的です。
銭湯であれば番台というところです。
受付のスタッフさんは客の見た目で男湯または女湯のどちらに入浴して良いか、するべきかを判断していると思われます。
ここで「自分は男湯?女湯?どちらに案内されるんだろう?」という不安が脳裏をよぎります。
そのため性別移行途中の人でも衣服を着た状態の容姿が「一般的な女性」とスタッフさんに判断された場合は女湯へと案内され、女湯の暖簾をくぐることになります。

一番高いハードル

さて、本番はここからです。

脱衣所に入ったあとは、当たり前のことですが衣服を脱ぎます。
そしてこの行為こそが一番ハードルが高いポイントだと私は考えます。

公衆浴場では脱衣所で衣服を脱いだあと、手ぬぐいサイズのタオルを持ち浴室に向かうのが一般的です。
バスタオルで体を終始覆い隠し、そのまま浴室内や湯船に入ることはマナー違反となるため、 どこかのタイミングで必ずタオルをとる必要があります。
これは全裸を人目に晒すことであり、誰でも少し恥ずかしさを感じる瞬間ではないでしょうか。

もし性同一性障害の診断書を持っていたとしても、入浴したい浴場の性別と自分の性器の見た目が合致しておらず、騒ぎやトラブルに発展する可能性もあります。
つまり性同一性障害者やトランスジェンダーが人前で全裸を晒すということは、一発で自分のセクシャリティをカミングアウトすることになるのです。
トランスジェンダーの中でも性別移行途中の人は自分の身体の見た目が特に気になります。
他人の前で裸をさらけ出すことは普通したいと思わないでしょう。
また性別適合手術を受け、戸籍の性別を変えた人でも公衆浴場や温泉施設に行くのを戸惑う人も少なからずいると思います。
その理由は、自分が「元女性」や「元男性」と言われたり思われたりするのが嫌だと感じるというのもあります。

しかし、本音では「大きなお風呂に入浴したい」というトランスジェンダーは少なからずいます。
家のお風呂では味わうことのできない温泉などの大きなお風呂は、性別に関係なく気持ちの良いものですからね。

「純粋に浴場施設を楽しみたい」ただそれだけ。

わたしを含め「公衆浴場や温泉施設を純粋に楽しみたい」というトランスジェンダーの思いを実現しやすくするためには何が必要だろう?と考えてみました。

今すぐにできるアイデアとしては、前述したような誤解やトラブルなどを避けるために事前に利用したい旨と事情を施設の方にお伝えするのがひとつの手かなと思います。
ただし利用できるか否かは施設側の判断になり、利用の際には望まないカミングアウトをすることにもなるので注意が必要です。

家族風呂や貸し切り温泉などを利用すれば問題解決のように思えますが、実際には利用時間に制限があったり、料金が割高であることも否めません。

トランスジェンダーと公衆浴場の未来

今後は施設側にトランスジェンダーの中にも「公衆浴場や温泉施設を利用したいと言う人達が少なからずいる」ということを、まずは知ってもらうことが大切だと感じます。
知っていただいた上で、トランスジェンダーが訪れた際の対応を事前に決めておいて頂けると嬉しく思います。
これは利用する側(トランスジェンダー)も利用される側(施設)も、いざという時にあたふたしないためでもあります。

現在、トランスジェンダーが利用できる公衆浴場や温泉施設が全国に広がりつつあります。
しかし、まだまだ利用できる施設は限られているのも事実です。

この先々、さらにトランスジェンダーの人たちが利用できる公衆浴場や温泉施設が増えていくためには、まずは前途したように利用を希望するトランスジェンダーが存在していることを知ってもらうこと。
さらには全国の公衆浴場業界の皆さまの横の繋がりで今後の取り組みについて協議をしていただき、トランスジェンダーもその他の皆さまも心地よく利用できる仕組みができていくと大変嬉しく思います。
トランスジェンダーの皆さんも一度、公衆浴場施設を利用するとそれまで懸念していたことがウソのようになくなくなり、利用するハードルが下がる人も多いと感じます。

誰でも入れる公衆浴場や温泉施設が全国に広がっていくと嬉しいですね。

変化する日本のトランスジェンダーライフ①温泉とワタシ達のいい関係

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人生の行路をかなり遠くまでたどってくると、
以前は偶然の道連れに過ぎぬと考えていた多くの人が、
ふと気がつくと、実は誠実な友だったことがわかる。

ハンス・カロッサ 1878 – 1956
ハンス・カロッサ 1878 – 1956