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ノンビリ おこげ ライフ〜町の歯医者さん時代:カミングアウトしない編

私がこれまで経験した、仕事の中でのLGBTQ+についてお伝えしたいと思います。
今回の内容は大きな事件でもなく、そんな事で悩まなくても…と思われる程度の小さな事かもしれません。
しかし現在はLGBTQ+に理解のある方と、理解が難しい方が共存している時代で、法律や規則や常識ではどうすることもできない場面をこれまで見てきました。それは違う!と声を高らかに上げることも出来るかもしれませんが、私自身は声を上げるよりも毎日穏やかに、笑って過ごすことが出来るようになれば嬉しいと考え、スムーズに進めることが出来るように日々のお仕事を行ってきました。

松尾寛子

大阪府出身/会社員
臨床現場での経験を活かし、専門学校の教員として学生指導に従事し、これまでの経験を基に現在は高等教育に携わる方々のサポートを行う。20代の頃に1人のゲイと偶然出会ったことがきっかけとなり、性の多様性を身近に感じ、それまでの概念が大きく変化する。その後、結婚・出産を経験しつつ、LGBTQとの交流を継続し現在に至る。世間では一般的と言われるストレートという立場であること。また人権啓発としての「LGBTQとは」と掲げたこともない、ごくごく普通に生活する1人の人間。彼らとの交流を通して感じた幸せ、感性や価値観を皆様と共有することが出来たら幸いです。

町の歯医者さん時代:カミングアウトしない編

当時の私は後輩への指導や、ドクターとスタッフの橋渡し役というマネージャーをさせて頂いていました。ある日、助手のアルバイトさんが相談してきたことは、「ナース服をパンツタイプに変更したい」という希望でした。理由を確認すると、「スカートを身に着けるだけで辛い気持ちになる」と、今まで我慢して隠していた気持ちを打ち明けてくれました。

その歯医者さんでは歯科助手、歯科衛生士、歯科技工士、歯科医師など職種により院長先生の強い意向でユニフォームを分けており、簡単に変更できない状況でした。ストレートの私にとっては、スカートスタイルとパンツスタイルに大きな差を感じないのですが、そのように感じる人もおり、またそのような主張もできる時代へと変わってきたことは良い事だと私は思うので、なんとか希望通りにしたいと考えました。しかし、当時72歳の院長先生にその感覚を理解していただく事は大変難しく、そのまま正直にお願いしても、話さえ聞いてくれないだろうと容易に想像できました。それまでの生活の中でも「女性は女性らしく」や、「子供を産まない女性は女ではない」など、性に対しての理解は残念ながら期待できない昔ながらの先生でした。また希望を申し出たアルバイトさんも自分の性的指向に関しては可能であれば誰にも言わないでほしいという希望もありました。 そこで、両者の意見をくみ取りつつ、希望通りの「スタッフ全員パンツスタイル着用可能」というミッションを達成するために、アルバイトさんと女性の先生1名、そして私の3名で作戦を練り、最終的にはミッションを完了することが出来ました。(女性の先生にだけはカミングアウトをして協力していただきました)

作戦1

女性特有の生理痛や冬場の冷えなど、これまで我慢や見えないようにしてきたことをわざと表面化し、LGBTQ+の側面以前に、スカートが体調面で不都合な場合があることを認識していただく。

作戦2

お昼休み時、全員が休憩している場所にあるTVで医療ドラマを流し、パンツスタイルのユニフォームをかわいいと大声で言い合う。

作戦3

社会の現状、諸経費、スタッフの体調面の集約、業者との交渉など全てを書類にまとめた上で、院長に交渉する。

作戦1~3を約2か月間で行い、全ての方が納得して無事ユニフォームのパンツを追加することが出来ました。
たかがユニフォームの変更という大した問題ではないのかもしれません。しかし院長先生は体調面を優先してくださったというスタッフの感謝の気持ちと、時代に即したという対外的な評価を得るという2つの満足を感じることができ、最終的には喜んでおられました。またアルバイトの方ですが、その時の経験もきっかけとなり、その医院自体を好きになってくださり、今では正社員として、また私の担当していたマネージャーとなってまとめ役になって下さいました。(ちなみに今でもカミングアウトはしていません)
今回の院長先生のように、時代や世の中の流れを理解するには難しい年代の方が、現代ではまだまだ多くいらっしゃると思います。また個人の考え方やその場の状況により、多種多様な事情があるでしょう。その為、カミングアウトのすべてが正義ではないと私は思います。しかし、全てを我慢しなければいけないという時代でもないと思います。周囲の方の意見を尊重しつつ、少しずつ良い方向に進むことができるよう、これからも自分の出来ることを全うしたいと思います。

ノンビリ おこげ ライフ〜町の歯医者さん時代:カミングアウトしない編

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僕は読書が大好きだ。
もっと多くの人に本を読むようアドバイスしたい。
本の中には、まったく新しい世界が広がっているんだよ。
旅行に行く余裕がなくても、本を読めば心の中で旅することができる。
本の世界では、何でも見たいものをみて、どこでも行きたいところに行ける。

マイケル・ジャクソン 1958 – 2009
マイケル・ジャクソン 1958 – 2009